カリキュラム

学部教育課程

周知のように、航空宇宙技術は、その展開速度が早く、技術集約の度合いが高いのが一つの特徴です。対象とする航空機についていえば、小型低速の軽飛行機やヘリコプタからジャンボジェット、超音速旅客機まで、宇宙機では、小型の気象観測用ロケットから衛星軌道上の有人実験室、あるいは太陽系の縁にまで旅しようという宇宙探査船まで、またこれらの推進装置について見れば、小型のピストンエンジンや大型ターボファンエンジン、ラムジェットエンジンから、一基の推力が数千トンで持続時間が数十秒の巨大な化学ロケットや推力は数グラムながら持続時間は年で数える電気ロケットまで極めて多様化し、それぞれ進歩しつつあります。

また基礎となる学問分野からいえば,航空宇宙工学の他に計測、通信、情報、計算機、信頼性工学など、多くの学問分野の統合の上に成立っています。航空宇宙技術の急速な展開は、これら新技術の発展に先導的な役割を果してきました。それゆえにまた,技術集約型の産業国であるわが国にとって、発展が要請される分野の一つになっています。

航空宇宙工学科における専門教育は、しかし、航空宇宙技術者の養成のみを目指しているわけではありません。

航空宇宙を教育のための統一的な題材に採りつつ、広く技術者および研究者としての基礎教育を行なうことを目的としているのです。限られた期間の専門教育で最も効果的な教育を行なうために、当学科の学部学生は前記の2専修コースに分けられ、基礎工学から卒業論文、卒業設計までの標準科目の履修によって、それぞれの分野が形成する技術のピラミッドの底から頂きまでの概貌が把握できるようになっています。

技術のピラミッドの一つを把握することこそが、新しい技術を開拓しようとする者への基礎教育として最も効果的な方法であると、私たちは考えているのです。

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ライトフライヤー,1903年初飛行. (CG)

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進学後のコース振分け

航空宇宙工学科へ進学した学生は、まず、航空宇宙工学に関する基礎科目を学びます。その後、3年の冬学期からは、2つの専修コース

に分かれ、学部卒業まで、各々のコースに関してより専門的な内容について深く学びます。
各コースへの振分けは、3年の6月末に実施する希望調査に基づきますが、いずれかのコースに定員を超える志望があった場合、教養学部における成績と2年冬学期における成績を総合し、順位付けを行ったうえで決定されます。

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研究室一般公開(五月祭)

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カリキュラムの概要

航空宇宙工学科カリキュラムの概要 (PDF形式)

航空宇宙工学科カリキュラムの概要 (PDF形式)

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各専修コースの専門科目はそれぞれの対象の研究に必要な幾つかの科目を柱とし、工作法、整備および運用などの実際面、宇宙科学など使用環境面の概要を述べる補間的な講義から構成されています。

各コースの柱となる科目については、工学部の各学科のうちで最も精細に丁寧な教育が行なわれるので、卒業後の諸君にとって学識上一番得意な分野になるでしょう。

これら専門科目のほかに数学、力学、材料力学、電気工学、計測工学、応用解析学など工学の基礎となる一般科目を第4学期(教養学部)から3年にかけて並行的に学習することになります。

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超音速機風洞試験

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履修のアドバイス

各専修コースの科目はそれぞれの専修コースについて、技術のピラミッドを把握するために、最も適当と考えられる科目を配当したものです。いわば、標準のメニューと考えてください。
学生の自主的な学習計画に基づく科目選択の自由はできるだけ満たされるように配慮されています。たとえば、航空宇宙機体構造、航空宇宙制御工学、航空宇宙原動機学といった履修選択の仕方も可能になっています。

以下、標準的な科目配当に従って、各コース毎の履修科目の内容を述べます。

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ジェットエンジンの内部構造

航空宇宙システムコース (2012年度 27名)

航空宇宙システム専修コースでは、空気力学、構造力学、航空機力学および制御に関する諸科目が主要な柱になります。

空気力学は機体の周りなどの空気の流れを取扱う学問分野で、第4学期の空気力学入門を手始めに流体および気体力学の進んだ理論と、航空機および宇宙機に即した空気力学の講義が行なわれます。

構造力学は航空機の機体が荷重を受けたときどのような内力を生じ変形を起すか、最も軽量な宇宙機の構造法は何かなどを研究する 学問分野です。第4学期に始まる材料力学などを導入部として、航空機に特有な薄板張殻構造、耐圧耐熱構造、振動および空力弾性、材料などの講義から構成さ れます。

航空機力学および制御は航空機の飛行原理および性能、安定や操縦および飛行物体の軌道力学、軌道の決定と制御、宇宙機の姿勢制 御などを取扱う分野であって、第4学期の飛行の原理を皮切りに、航空機およびヘリコプタの安定・操縦性、自動操縦装置およびそれらに必要な航空宇宙機器な どの講義が用意されています。また、宇宙機の工学的な応用なども対象とします。

これらの諸講義を総合するものとして航空機設計法の講義があり、航空宇宙システム学計画および製図(卒業設計)につながっています。

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気流に傾けて置かれた三角翼面上にできる前縁渦

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小型無人飛行機

航空宇宙推進コース (2012年度 22名)

航空宇宙推進専修コースの科目は、推進機関に関する理論体系を柱として,機器および制御,構造設計および材料などの諸講義 から構成されており、航空用ピストンエンジンやジェットエンジンさらに固体および液体推薬を用いる化学ロケットをはじめ、イオン、プラズマおよび原子力な どによる非化学ロケット等、宇宙機の打上げから惑星間航行に必要な推進装置の全貌が捉えられるようになっています。

第4学期において推進機関の働きの基本をなす熱力学および流体力学の基礎と、航空機・ロケット・宇宙機における推進機関の意義を学び、つづいて推進機関の 内部における気体の流れ、燃焼、伝熱などの諸現象とその理論、圧縮機やガスタービンなど推進機関構成要素の特性およびそれらを総合した推進機関の性能な ど、航空宇宙推進機関に関する理論体系を学んでいきます。

これらの講義は並行的して行なわれる航空材料,機器学および航空原動機構造設計などの講義と共に、卒業論文および航空宇宙推進学計画および製図(卒業設計)の基礎となります。

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電気推進(アークジェット)

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ロケットエンジンのターボポンプ